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水頭症治療の課題
水頭症とは、脳室内に過剰に脳脊髄液が貯留する疾患で、
あらゆる年代に起こりえます。
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水頭症とは、脳室内に過剰に脳脊髄液が貯留する疾患で、あらゆる年代に起こりえます。水頭症の治療には手術が必要です。また、脳外科手術のなかでも数の多い手術です。1960年以降、シャントシステムの留置が主体となってきました。しかし、従来のシャントシステムの機能不全発生率は大変高く[1]、現在でも水頭症治療は患者さまにとって大きな負担であり、また、医師にとっても不確実性を伴うものです。
私たちは、現在の水頭症治療は決して満足できるのもではなく、より良い解決策を見つけなければならないと考えています。患者さまの生活の質を高めるためには、医師にとって効果的で信頼できるシャントシステムが必要なのです。
シャントシステムは命に係わる医療機器です。しかし、長年にわたる治療経験やシャント技術の継続的な革新にも関わらず、高い頻度で機能不全を起こすことが知られています[1]。さらに、従来のシャントシステムは、姿勢変化よって生じる影響に対応できていません。オーバードレナージによる合併症によって、再手術が必要となる可能性があります。これは患者さまにとっては負担が大きく、また手術に伴うリスクも伴います。
機能不全発生率の高さが、シャントシステムの効果に影を落としています[10]一般に、シャントシステムの40%が2年以内に、98%が10年以内に機能不全を起こすと考えられており[1]、従来の固定圧バルブと可変式バルブによる違いはなはありません[11,12]。約4人に1人の患者さまが合併症を引き起こし、合併症を減らすための改善はほとんどなされていません。バルブやカテーテルの閉塞が合併症の原因の多くを占めます[14]が、しかし、オーバードレナージによるものと考えれられる非外傷性硬膜下血腫も比較的高い頻度で発生することが報告されています[13]。
シャント再建術を何度も繰り返す原因の最も多い原因は機械的な故障です [2] 。カテーテルまたはバルブの閉塞が主な原因です [14] 。また、外圧がかかったり、設計不良によって、シャントシステムの部品の故障も起こりえます[15]。
圧可変式バルブは、身の回りにある低強度の磁場による影響を受ける可能性があります。スマートフォン[5]、ヘッドフォン[6]、タブレット端末[7]、おもちゃ内の磁石[8][9]によって、圧可変式バルブの開放圧が変わったという報告があります。
圧可変式バルブの最適な圧設定は、患者さまにとって非常に重要です。そのため、日常生活で意図せず圧変更されてしまうことは、患者さまや医師にとって懸念事項となります。
水頭症のタイプや、想定される術後管理の必要性に応じて、患者さまごとにシャントバルブシステムを選択することが重要です[9]。
オーバードレナージ発生の主な要因である静水圧や、腹腔内圧は、患者さまそれぞれで異なります。シャントバルブの開放圧の選択は複雑なため、患者さまにとって最適でない可能性があります。患者さまとシャントバルブシステムのミスマッチやオーバードレナージ関連合併症、シャント再建術を避けるためには、長期間にわたる経過観察が必要となります。また、時には再手術が必要となります。これは、患者さまにとって負担が大きく、周術期リスクも避けられません。また、医師にとっても大きな負担となっています。
従来の圧可変式シャントバルブを用いた治療とは、常に妥協点を見つけることを意味します。
・患者さまの術後症状の改善のためにシャントバルブ開放圧を下げると、座位や立位でのオーバードレナージのリスクが生じます。
・直立姿勢では、オーバードレナージにより硬膜下水腫・血腫を引き起こすことがあり、重度の頭痛や嘔気に繋がります。
・オーバードレナージによる症状に対応するためにバルブ開放圧を高く設定すると、臥位でアンダードレナージになる可能性があります。
シャントバルブ開放圧は、立位と臥位の間で、個々の患者さまにとっての適切な値を見つけるまで、何度も調整することがあります。しかし、臥位と立位の両方において至適圧とならなければ、患者さまはシャントバルブの恩恵を受けることができません。
患者さまにはそれぞれ違いがありますが、一つ確実なことがあります。それは、すべての活動的な患者さまは立位での脳脊髄液の排出に重力の影響を受けるということです。これは1日数時間だけではなく、毎日最大16時間にも及びます。姿勢に依存する重力の影響を克服することで、オーバードレナージを防ぎ、患者さまの症状改善に繋がる可能性があります。
重力可変式シャントバルブによって、医師は姿勢に依存する重力の影響に対応することができ、患者さまの症状改善とオーバードレナージ発生を大幅に減少させます[19]。
[1] Lutz BR, Venkataraman P, Browd SR. New and improved ways to treat hydrocephalus: Pursuit of a smart shunt. Surg Neurol Int 2013;4(Suppl 1):S38-50.
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